今日は生後日本人の父から認知された子の出生による国籍取得を認めない国籍法3条の規定を合憲とした最高裁平成14年11月22日判決について,その妥当性の検討はさておいてですね,行政書士として類似事例にあたった場合どういう戦略をとるべきかについて,ワタクシの考えを述べてみたいと思います。
日本では国籍取得の条件については国籍法という法律が定めておりまして,日本国籍を出生によって取得できるのは原則として日本人の子どもです。両親のどちらかが日本人であればオッケーです。これを血統主義といいますが,外国では国内で生まれた子どもに国籍を与える出生地主義を採用している国もあります。アメリカなんかが有名なところでしょうか。日本人夫婦がアメリカで出産すると子どもは日本国籍とアメリカ国籍の両方を出生により取得します。
でもですね,ここでひとつ落とし穴があるのであります。(1)父親が日本人で,母親が外国人の場合で,(2)父親と母親が結婚していない場合,子どもが生まれる前に認知をしておかないと子どもは出生によって国籍を取得できません。生まれてから認知をしたんでは,だめなんです。
それじゃーどうすんの,とお困りの向きにはですね,生後認知をしてから,父親と母親が結婚すれば,その子どもは日本国籍を取得できます。これを準正による国籍取得といっております。
しかし事情があって結婚はできないという方々もたくさんおられることでありましょう。最高裁平成14年11月22日判決も,そういう事案でありました。父は日本人,母はフィリピン人。結婚はしておらず,生後日本人父が子を認知したが,父母は別れてしまって結婚は考えられないという事案です。日本人の子どもなのに,親が結婚していないからという理由で国籍を得られないのは不合理な差別だと母親側は国籍確認訴訟で主張したのですが,最高裁は別に不合理じゃないでしょ,として認めませんでした。
ワタクシはこの事案を読んで,この最高裁判決が出てからは,国籍確認訴訟が生後認知を受けた子の国籍取得に使える場面はほとんどなくなったのではなかろうか,という印象を受けました。少なくとも,家族のあり方として,両親が結婚していない家庭というのがもっとありふれた存在になるまでは,無理っぽい感じであります。
ところで本件では,問題となった子どもの姉が出生前に認知を受けて日本国籍を有していましたから,母親であるフィリピン人女性は「定住者」の在留資格を得ていたか,少なくとも得られる状態にあったことが推察できます。でも,子どもが一人しかいなかったら? 母親がオーバーステイ状態だったら? 早く子どもに日本国籍を取得させないと母子共々退去強制手続に乗ってしまう可能性があります。
そんな事案に遭遇したら,ワタクシとしては,子どもは簡易帰化許可申請を行い,同時に母親について子どもの簡易帰化許可申請中であるという事情を切々と訴えて在留特別許可で「定住者」の在留資格をくださいと願い出るのがベストなのではないかと思っております。
簡易帰化というのは日本人の実子である外国人に認められる帰化で(他にもあります),日本国内に在住し,素行善良で,反政府活動をしておらず,日本国籍取得の際に外国籍を離脱することが可能であること,という条件さえクリアすれば日本国籍が得られます(国籍法8条)。子どもがまだ幼い場合,素行だの反政府活動は問題になりませんから(たぶんネ),まあまず認めてもらえるんじゃないでしょうか。
もし認めてもらえなかったら,それこそなんでやねん,という怒り爆発適状ですから,弁護士さんに登場していただいて,法務大臣の裁量権濫用であるじゃによって不許可処分の取消と帰化の許可の義務づけ訴訟を併合提起,プラスして帰化許可義務づけ訴訟を本案とする仮の義務づけ訴訟もぶちかましてもらいます。母親の退去強制が始まらないようにする予防措置もついでにお願いしておきましょう。
行政訴訟はめったに勝てないし,あんまり儲からないからとかなんとかいって引き受けてくれない弁護士は多いですが,こういう事案だったら勝てる見込みがありますから,法テラス経由で頼めばけっこうお安く引き受けてくれるんじゃないでしょうか。勝てば判例時報に載りますよ!とかヨイショするのも効果的かもしれません。
入管業務を専門になさっているベテランの行政書士の先生方は,こんな事案ではどういう戦略で臨まれるんでしょうねぇ。弁護士に登場してもらうベストなタイミング,というのも,考えておかなければなりませんね。
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