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遺留分放棄の合意書の使い道

 思いつきでいろいろやってみるがぶりぽん事務所謹製のスキームあれこれ(お試しは自己責任で)。今日は,遺留分放棄の合意書を作ることにどれほどの効果が期待できるのかを考えてみたいと思います。

 同業者の皆様は,ここで一瞬「ハァ?」とお思いになることでありましょう。遺留分を相続開始前に放棄するには家庭裁判所の許可がいるのだから(民法1043条),相続開始前に遺留分放棄の合意書なんぞ作ったって意味ないじゃん,と,とりあえずお思いになるのがまっとうな行政書士であります。それじゃワタクシの思いついた逆転スキーム,行ってみましょう!

 設例。ドラ息子がある日お父さんのところへやってきて言いました。「オヤジ,俺はもうアンタと親子の縁をきりたい。もうオヤジとも二度と会わないつもりだから,ついては遺産の前渡しとして5百万円くれ。それでもう俺は葬式のときにも顔出さねーよ。相続は放棄する。それじゃさっさと5百万作ってくれよな。」

 お客様はお気の毒なお父さん。無理して5百万円作ろうと思えば作れなくもないが,相続の際にドラ息子氏が相続分を主張し,トラブルになるのを防止するような対策を講じてほしいというご希望だとしましょう。計算してみるとドラ息子氏の遺留分は7百万円。たしかにトラブルになりそうな感じであります。

 「息子さんに言って家裁で遺留分放棄の許可を取ってもらってはどうですか。あとは遺言で好きなようにしちゃえばオッケーですよ」という提案をするも,「そういうことを自分からするような息子ではありません」とのこと。

 まあまず一番大切なのは領収証ですかね。「ただし,生計の資本として」と入れておけば,特別受益にあたる贈与があったことのナイスな証拠に使えます(903条)。

 次に贈与の契約書を作ること。ここにも「生計の資本として」を入れるとともに,「遺留分を放棄し,ただちに家裁で遺留分放棄の許可を得る」こと,ならびに「相続開始の際は相続放棄の申述を行う」ことを約させ,さらに,ワタクシとしては,このドラ息子氏のバカっぷりを付言で大展開してみてはどうかと思うわけであります。たとえばこんな感じ。

 乙は,甲に対し,甲との親子の縁を切りたい,今後は二度と会わないから遺産の前渡しとして5百万円欲しい,葬式にも出ないし,相続は放棄する,と述べた。甲は息子である乙がこのようなやり方で去っていくことに深く心を痛めたが,乙の希望を叶えることを決意し,金策のために○○を売却し,本件贈与の目的である金5百万円を用意した。

 こんなこと書いたからって,贈与契約の効果にはなんの影響もありません。遺留分放棄は家裁の許可がないとできないし,相続放棄は相続開始前にはできません。でもね,まったく無意味かというと,そうじゃないんじゃないかな,と思うわけであります。

 それというのも,「遺留分放棄は家裁の許可がないとできない」というのが大原則なのですが,例外的に家裁で許可を取らなかったのに,遺留分権利者の権利行使が権利濫用として認められなかった裁判例というのがけっこうあるのです。

 そのキーワードが,「身分関係の形骸化」。「排除請求したら認められるであろう事情」があるとなおよろし。本件みたいな絶縁状態とバカ息子ぶりが証拠からあらわれてきたら,家裁の許可を取って遺留分放棄してもらわなくても,それと同様の効果が得られる可能性が出て来るわけであります。その証拠として契約書にアレコレ書いておこうというワケであります。ドラ息子氏には契約のときに実印と印鑑証明持ってきて下さいね,と言っておき,署名・押印してもらいます。文面を見たらドラ息子氏はさぞムカつくでしょうが,5百万は目前なのですからここで署名・押印を渋りはしますまい。

 そして相続開始して,ドラ息子氏が遺留分減殺請求で訴訟のひとつも打ってきたとなれば,やる気満々の弁護士ならきっと権利濫用だとゴネてくれることでしょう。そのときにこの契約書が援護射撃になる,かも?・・・ということを考えていた日曜日の昼下がりでありました。

 ちなみに参考判例はこちらです。

 東京高判H4.2.24
 東京地判H15.6.27

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