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兄弟に,「相続させ」たいとき

 先日,なかなか面白い話を聞きました。配偶者も子供もいない独身のかたが,「自分になにかあったら,残された財産は兄弟で相続してほしい」みたいな内容の自筆証書遺言を残されていたのだそうです。

 この方はお母様がご存命でした。この場合お母様が相続人になり,ご兄弟は相続人とはなりません(民法889条1項)。「相続させる」というのは相手が相続人のときに使うものですから,この遺言の扱いには2つの結論が考えられるわけです。

 ひとつは,相続人でない者に相続させることはできないから,無効な遺言として扱い,法定相続で処理するというもの。

 もうひとつは,本来だったら「相続させる」ではなく「遺贈する」とすべきであるけれど,シロウトさんにそんなことわかりっこないし,言わんとしているところは「遺贈」ということぐらい見ればわかるのだから,「遺贈する」と読み替え,有効な遺言として処理をする,というものです。

 判例は遺言者意思の尊重という理由で遺贈と読み替えているようですが(最判平成3年4月19日),この事案では遺されたご兄弟はもらう気満々だったにもかかわらず,法務局・税務署の指導の結果,結局不動産はいったんお母様の名義になったそうです。遺言が無効とされたのと,効果において異ならない結果となったようであります。

 具体的な事情は存じ上げないのでなんとも言えませんが,判例と乖離した運用に遭遇した場合,文句をたれて初志貫徹しようとするときにどうしても考えなければならないのが「費用対効果」という問題です。権利の実現には費用がかかる。ついでに時間も労力もかかります。これは相手が悪徳商人だろうが行政庁だろうが同じことであります。

 学生時代や会社勤めの頃は何のトラブルもなく,のほほんと生活していたワタクシ。行政書士になってから,世の中けっこうシビアだな,と実感するようになりました。

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行政書士(業務関連)」カテゴリの記事

コメント

はじめてのコメント失礼いたします。
神戸で行政書士開業をひかえております、大森と申します。

とても興味深い記事で読み入ってしまいました。

>「費用対効果」という問題です。権利の実現には費用がかかる。ついでに時間も労力もかかります。これは相手が悪徳商人だろうが行政庁だろうが同じことであります。

おっしゃる通りですよね。
「大人の喧嘩は裁判所で」と、行政書士の受験生だった頃に先生から言われたことを思い出しました。

私はいま、クーリングオフ業務について勉強しているのですが、悪質商法の事例をみていると「こんなやり方でされた契約なんて無効でしょ!?」
と思うことがしばしばあります。

ですが、契約としては成立されちゃってるんですよね。取り消すには新たな手続きが必要で、民法での救済となると、裁判手続きも必要になる可能性もでてきて・・。

まだ実務に就いていない私が言うのも何ですが、世の中シビアなんだなと、身の引き締まる思いです。

またお日記拝見させていただきに参ります!

勝手ながら、私のブログにもリンクを貼らせて頂きました。

更新たのしみにしております。

それでは失礼いたします。

投稿: 大森 | 2008年1月22日 (火) 22時11分

 大森様

 はじめまして。そして,コメントありがとうございます。行政書士として開業なさるのですね,どうぞよろしくお願いいたします。

 理不尽だと思われる仕打ちをされながら,お金がないために泣き寝入りをする方は世の中にたくさんいらっしゃるようですね。仕事ですから報酬をいただかないわけにもいかず,そこがネックになってしまうこともありそうです。

 現時点では,行政などの無料相談窓口にどんなものがあるのか調べたり,連絡先を控えるなどして準備するぐらいしか対応策が思い浮かびません。

 「行政書士業は,最初の3年間は厳しいけれど,それを乗り越えれば何とかなる」とワタクシの地元の先輩方はいつもおっしゃいます。神戸のような都会では事情が違うのかもしれませんが,不屈の精神と燃える商魂で頑張って下さい!(^-^)

投稿: がぶりぽんチョコ | 2008年1月22日 (火) 23時54分

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