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イギリス人が日本で遺言を作るには

 昨日と今日は,「日本に長く在留し,日本に不動産とその他の財産を有するイングランド出身のイギリス人男性が,遺言によりイギリス人児童Aを認知するとともに,日本にある全財産をAに相続させる旨の遺言を作成したい」という想定で,国際私法やイギリス法について勉強してみました。

 先日大学の図書館で借りてきた木棚照一先生の「国際相続法の研究」(有斐閣)や,この夏にイギリスに行ったときに買ってきた「Last Will & Testament (Law Pack)」という書式集,それから東京高裁昭和63年10月5日判決などを参考にしたのですが,なかなか面白かったです。以下につらつら書いてみようと思いますが,あくまで私見ですので,そこんとこヨロシクであります。鵜呑みにしてヘタをお打ちになってもワタクシは関知いたしません。

 まず,遺言事項というのはいろいろあるわけですが,そのなかで認知というのがありますね。日本において遺言で認知ができるのは民法779条にそう書いてあるからですが,これは万国共通の制度というわけではありません。遺言で認知ができるかどうかは,認知の準拠法として指定された法で決まります。

 認知の効果は親子関係の成立ですので,出生後の認知の準拠法は通則法29条2項により認知のとき父の本国法または子の本国法によります。本件では父も子もイギリス人ですので,まずイギリス法を見て,遺言で認知ができるのかを確認しないとならないわけです。この子が日本国籍を持っていたら,子の本国法ということで日本法によることができるのでラクチンなんですがねー。

 そこでイギリス土産の書式集を見てみたのですが,認知(acknowlegement of paternity)の項目が出てきません。も,もしかしてイギリス法では遺言による認知が認められていないのかしら? ・・・この点は要確認であります。

 認知してしまえば親子関係がおそらく遡及的に発生しますので,Aは本件イギリス人男性の子としての地位を取得します。認知された子が相続人になるかどうかは,相続の準拠法で決まります。

 相続に関する事項の準拠法は被相続人の本国法となるのが原則であります(36条)。そこで反致の可能性を検討する必要がが生じるわけですが(41条),イギリス法では不動産とその他の財産に分けて準拠法を定めており,不動産の相続についてはその所在地法,その他の財産については被相続人の死亡当時の住所地法ということになるのだそうです。

 このイギリス人男性が日本で死亡すればどちらも日本法になるので,反致が成立して日本法によることになります。そうすると日本法では非嫡出子は相続人になりますので,これは「相続させる」遺言でオッケーということになりましょう。

 遺言で認知ができないとなると,遺贈をおすすめするということになりましょうか。もちろん生きている間に認知なさればいいのですが,遺言で認知を,と考える方は,生きている間に認知できない事情があるのでしょうからあまり期待はできません。

 ちなみに日本にある財産については,相続人の範囲や,遺留分・遺留分権利者も日本の民法で決まります。遺留分権利者がいるのであれば,遺留分減殺請求にそなえて減殺の順序の定めなども手当てしておいた方がいいかもしれませんね。

 さて,イギリス人が日本で遺言を作ると,遺言執行者がなかなか大変な目に遭うのですが,それはまた別の機会に書こうと思います。

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