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消費者契約法と特定商取引法(3)

 消費者契約法と特定商取引法の連載3回目の今回は,売買契約に無効・取消・解除事由が併存する事案において,どれを使うのが有利なのかということを考えてみたいと思います。念のためお決まりのセリフを申し上げますが,これはあくまでワタクシの私見ですから,鵜呑みにしてヘタ打ってもワタクシは責任負いません。

 えー,結論から申しますと,ワタクシはそれぞれのツールの要件・効果を吟味して,①主張・立証が容易で,②効果がオイシイもの,という観点から選べばよいと思います。

 ①については訴訟を前提として要件事実から考えてゆくべきじゃないでしょうかね。もちろん,行政書士は訴訟にはノータッチですが,仮に後で相談者が訴訟を決意して弁護士や司法書士に相談した際に,「最初から(弁護士や司法書士に)相談してくれれば○○できたのに,先に行政書士が××したから(あるいは××しなかったから)○○ができなくなってしまった」なーんてことになったら大変ですから,後のことも考えて行動する必要があります。どんなに大変かというと,相談者にご迷惑かけて申し訳ないというレベルの問題にはとどまらなくてですね,受任者の善管注意義務違反ということで相談者から債務不履行に基づく損害賠償請求をされる可能性があるということです。金額が大きいときには特に安易なアドバイスは慎まなければなりません。

 さて,では前回ピックアップした無効・取消・解除事由の要件事実を本件に即して検討してゆくことにしましょう。具体的には支払済代金の返還請求訴訟を行うときに,原告となる相談者が主張立証すべき事実,すなわち相談者がその証拠を出す必要がある事実です。したがって,これが少ないほど相談者に有利ということになります。

 錯誤無効

 通常は①意思表示に錯誤があること,②錯誤が法律行為の要素に関するものであること,の2つが要件ですが,本件では動機の錯誤の場合なので,③動機が表示されていることも必要です。

 詐欺取消

 ①詐欺の故意,②詐欺がなされたこと,③詐欺により表意者が錯誤に陥ったこと,④錯誤により意思表示がなされたこと,⑤取消の意思表示です。①は「法改正がなかったとは知らなかった」と言い張られると面倒です。知らないと言っているが本当は知っていたはずであるという結論を導ける証拠を相談者が出す必要があります。

 消費者契約法による取消

 ①契約が消費者契約であること,②契約締結の勧誘に際し,重要事項についての不実告知があったこと,③表意者がその内容を事実であると誤認したこと,④表意者が誤認に基づいて意思表示したこと,⑤取消の意思表示です。②の重要事項の不実告知と言えるかどうかビミョーということは前回述べました。

 特定商取引法による取消

 ワタクシが参照した要件事実マニュアルには載っていませんでしたが,消費者契約法とパラレルでしょうから,①契約が特定商取引法の対象であること,②契約締結の勧誘に際し,重要事項についての不実告知があったこと,③表意者がその内容を事実であると誤認したこと,④表意者が誤認に基づいて意思表示したこと,⑤取消の意思表示,であると考えられます。

 ちなみに特定商取引法における「重要事項」は,商品・役務・権利に関すること,価格,クーリングオフ等の制度に関すること,契約の必要性,業者の信用性,契約の動機付けも含まれます(9条の2第1項1号,6条1項各号)。消費者契約法の「重要事項」よりも広い概念のようですね。本件では契約の必要性についての不実告知といえるでしょう。「法改正で設置が義務づけられているなどと言った覚えはない」とか言われちゃうと面倒ですが,業者の故意を立証する必要がない点で詐欺の立証よりは楽でしょう。

 特定商取引法による解除(クーリングオフ)

 要件事実マニュアルによれば,①クーリングオフの意思表示を発信したこと。これだけです。ワタクシとしては,消費者契約法のときのように,②契約が特定商取引法の対象となることも含まれるんじゃないかと思うのですが,なんで書いてないのかな。まあ,②の主張・立証は簡単ですからどのみちあんまり問題じゃないようにも思います。

 ・・・さて,このように考えてみると,本件ではクーリングオフ(書面に記載不備があれば),錯誤無効(表示があれば),特定商取引法による取消,詐欺取消,の順に主張・立証が容易であるように思われます。消費者契約法による取消はビミョー。どれが使用可能かは事案ごとに異なるでしょうから一般化はできませんが,クーリングオフは確かに便利ですねー。

 効果に関しては,契約をなかったことにする効果はどれを使っても出てきます。クーリングオフの場合だと業者に商品の引取義務が生ずるほか,業者から損害賠償や違約金の支払請求ができなくなる点でさらに有利でしょう(特定商取引法9条3項,4項)。

 次回は,依頼事項の実現に向けての具体的手段の検討をしたいと思います。

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