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中国ビジネスの契約書と管轄合意

 今日は,入管業務の派生系である,事業協同組合を作って研修生・実習生を海外から招聘する業務について勉強しました。その際,中国の送り出し機関と日本の事業協同組合の契約書サンプルを見たのですが,ちょっと疑問に思ったことがあるので考えたことを書こうと思います。

 えーとですね,その契約書サンプルには,最後の方に「本契約の準拠法は日本法とする。甲と乙との間に紛争が生じた場合は日本国東京地方裁判所を管轄裁判所とする。」みたいな一文が入っておりました。この手の準拠法の合意と管轄合意は国際間の契約ではよく見られます。もちろんいつも日本法の東京地裁というわけではありません。外国法が準拠法とされることも,管轄が外国の裁判所になることもあります。

 そうはいっても日本人なら日本法での紛争解決には慣れているし,日本の裁判所にしてもらえれば近くて便利。それに日本の裁判官はえこひいきしないので安心される方が多いんじゃないでしょうか。だからこの契約書には「日本法の東京地裁」という条項が入れられたものと推察されます。契約締結に向けた交渉では基本的にお金を出す方が立場は強いですからね。

 しかし相手が中国企業の場合,このような条項を入れてみたところで,果たして実効性があるのかどうかワタクシは疑問に思います。この条項が役に立つシチュエーションを考えてみましょう。日本側はお金を払った。にも関わらず中国側が契約上の債務を履行しようとしない。解除だ損害賠償だ,ということで,契約書に記載の通り東京地裁に訴えたとしましょう。管轄が認められ,めでたく勝訴判決が得られて確定したとして,次に強制執行してもらわなければならないわけですが,その中国企業が日本国内に財産を持っているとは限りません。持っていたら,話は簡単なんですけどね。執行して終わりです。

 さて,ではその中国企業が中国にしか財産をもっていないときはどうするか。その判決を中国で執行してもらえばいいんじゃないの,とお思いになる方も多いと思います。でもそれは無理なんです。

 判決の執行というのは国家主権の作用ですから,外国の裁判所が出した判決を国内で執行するには,どの国も一定の条件をおいていて(日本の場合は民事訴訟法の118条です),その国の裁判所がそれを承認しないと執行してもらえないことになっているのですが,そこに必ずと言ってもいいほどよく出て来るのが「相互の保証」という条件です。つまり,中国の裁判所としては,中国の判決を日本の裁判所が承認して執行してくれるなら,日本の判決を中国で承認・執行するのにもやぶさかではないが,日本が承認してくれないならウチも承認する義理などないね,というわけです。ここまで説明するともう見当がつくのではないでしょうか。そうなんです,日本と中国の間に,相互の保証はありません。日本の裁判所が出した確定判決は,中国では紙切れ同然。ハイ残念でしたお帰りの飛行機はアチラー,というわけであります。

 じゃーどうすればいいの,ということはまた明日書こうと思います。でもあくまでワタクシの私見ですから,鵜呑みになさらないで下さいね。

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