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消費者契約法と特定商取引法(5) 消費者の逆襲

 消費者契約法と特定商取引法についての連載5回目の今回は,消費者の逆襲!ということで業者をギャフンと言わせる方法について考えてみたいと思います。実際に実行することは多くないとは思いますが,やろうと思えば何ができるのかを把握しておくことは重要です。どうしてかというと,これが把握できているかどうかは,内容証明の文面にもにじんでくるからです。悪徳業者は当然わかっているでしょうから,内容証明を読んで「あ,こいつはこれ以上のアクションは起こしてこないな」と思えばおそらく代金の返還請求に応じることはないでしょう。また逆に,「これは返金しないとヤヴァイぞ」と思わせることができれば,返金に応じる可能性も出てきます。

 そこで内容証明や民事訴訟以外にどんなことができるのかを考えるわけですが,そこで消費者契約法と特定商取引法の性格の違いというのが際立ってきます。

 まず,消費者契約法は,消費者を保護するために,一定の不当条項の無効と,一定の場合における消費者の契約取消権を定めたもので,あくまで民事上の権利関係について定めたものです。

 これに対し,特定商取引法は経済産業省が業者を取り締まるもの,いわゆる業法です。以前は取締り色が濃厚で,消費者保護色が薄いとの批判が多かったのですが,改正によりクーリングオフや取消権などが加わったおかげで,今ではだいぶ消費者保護も手厚くなっていますね。業法という性格からうかがえるように,特定商取引法に定められている禁止行為を行うと行政処分や刑事罰の対象となります。つい先日にも,某大手英会話スクールが特定商取引法違反で経産省から一部業務停止処分をくらっていたのをご記憶の方も多いと思いますが,アレが行政処分です。

 それでは本件についてはどんな行為が行政処分や刑事罰の対象となるでしょうか。まず,この消火器販売業者,「消防署の方から消火器の点検に来ました」という口上で名乗りを上げています。勧誘に先立って氏名・名称や勧誘目的である旨を明らかにしていませんね。特定商取引法3条違反です。次に,「法改正で消火器設置が各戸に義務づけられています」というのは,契約締結を必要とする事情に関する事項についての不実告知で,6条1項違反です。さらに,交付した書面に記載事項不備があれば(クーリングオフが使える場合になります)4条違反にもなります。これらの違反は業務停止命令及び公表の原因となります(8条)。

 刑事罰については,まずその行為者(販売員)について,6条1項違反が2年以下の懲役又は300万円以下の罰金,又はその併科(70条1項1号)。4条違反について,100万円以下の罰金(72条1号)。行為態様が違いますから両者は併合罪なんじゃないかと思います。

 特定商取引法には両罰規定がありますから,販売員の使用者である法人又は個人にも罰金刑が科されます(74条2号)。

 さらに,業務停止命令に違反した場合には,その行為者(販売員)について,2年以下の懲役又は300万円以下の罰金,又はその併科(70条1項2号)。使用者である法人・個人には3億円以下の罰金が科されます(74条1号)。ちなみに経産省はこの懲役2年を5年に強化する法改正を目指しているそうです。

 そして,特定商取引法の他にも,本件では詐欺罪(刑法246条)の成否が問題になるでしょう。10年以下の懲役です。民事では行為者の詐欺の故意を消費者が立証する必要がありました。刑事事件ではその立証をするのは検察官です。警察や検察は強制処分をバンバン使えますから,民事で詐欺取消が使えなくても刑事で詐欺罪が成立する可能性はあります。

 ・・・とまあこんなところでしょうか。どうでしょう。悪徳業者がいやがりそうな制裁が揃っておりますね。もちろん経産省や警察の公権力を召喚するにはそれなりの儀式ってものが必要です。エロイムエッサイム,我は求め訴えたり!・・・というわけで経産省を召喚するには特定商取引法60条に基づく申し出がよいでしょう。財団法人日本産業協会が申し出に関する助言・指導や申し出を受けた調査を行っています。なお,都道府県や市町村の条例で,同様の申し出制度が定められていることもあるらしいですから,調べてみる価値があるかもしれません。警察には被害届と告訴ですかね。

 ワタクシでしたら,内容証明にはおきまりの「いついつまでにお支払いなき時は,法的手続を検討させていただきます」ではなく,「いついつまでにお支払いなきときは,民事・刑事・行政上の手続を検討いたします(依頼者がやる気満々のときは,「手続をとらせていただきます」)」と書くつもりでおります。特定商取引法を読んだことのある業者だったら何のことだかわかることでありましょう。わかんなかったらこの際身を以て体験していただくのがベストであるようにも思われます。依頼者様の胸三寸ですがね。

 以上で消費者契約法と特定商取引法の連載はとりあえず終わりです。全部お読みになったかた,お疲れさまでした!

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コメント

>がぶりぽんチョコさん

 難しくてわかりにくいといわれる専門家としての回答をここまで簡潔明瞭に行政書士(さらに市民サイド)の立場で書ける方にお目にかかったことはありません。

 自信満々の方ほど、ひどい解決策(文章)を一面的(失礼。まれに2面的に)書いてます。
 「俺のことか?」って思ったあなた、あなたではありません(多分…)。そう思っていない俺ってグレイトと思っているあなた、そうあなたのことを言っているんです…^^;

 ホント、これは才能以外の何ものでもありません。
 参りましたm(_ _)m

投稿: ドン・キホーテ | 2007年6月18日 (月) 02時04分

 ドン・キホーテさん

 ありがとうございます。
 にわか勉強でしたが,書くことで理解が多少深まったと思います。でもきっとすぐに忘れてしまうのが悲しいところです。毎日のようにクーリングオフ案件がくれば別なんでしょうけどねー。

 このチラシの裏がいつかどこかで誰かのお役に立つとよいのですが。

投稿: がぶりぽんチョコ | 2007年6月18日 (月) 12時16分

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