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中国企業との契約と仲裁合意

 今日は昨日の記事に引き続き,中国企業との契約書における管轄の合意について考えてみます。

 昨日は,中国企業との契約書で準拠法と裁判管轄を日本に持ってきても,実際に中国企業側に債務不履行が生じた場合に執行できなくなるんじゃあるまいか,それならどういう規定を契約書に置いておくべきなのか,ということを書きました。

 それでですね,ワタクシの私見といたしましては,この場合は仲裁合意を契約書に置いておくべきであると思います。仲裁というのは裁判外紛争処理手続のひとつで,「当事者が仲裁人による仲裁判断に服することを合意し,それにより進められる手続」をいいます。訴訟と違って当事者の合意がないと始まりませんが,いったん仲裁判断が示されると,当事者はそれに拘束されます。つまり仲裁判断は強制執行をしてもらうためのチケットである債務名義としての効力を有しているのです。

 でも昨日の話の流れからすると相互の保証がいるんでしょ,中国と日本には相互の保証はないんじゃないの,とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。でもあるんですネそれが。

 日本と中国はともに「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」,通称「ニューヨーク条約」を批准しています。仲裁合意に問題がなければ,公序の問題が生じでもしない限り,お互いに仲裁判断を承認・執行しなければなりません。

 さてではその仲裁合意とやらを契約書の中に入れるには,どんなことを書いておけばよいのでしょうか。中国での執行を視野に入れて,中国法で要求している要件を検討してみますと,まず合意自体の有効要件として,①専属管轄の範囲外であること,②実質的な関連性があること,③渉外契約または渉外財産権益紛争であることが必要です。これが満たされないと日本でも中国でも執行ができなくなります。これらの条件が満たされているとして,形式的要件としては,①仲裁請求の意思表示,②仲裁事項,③当事者が選定する仲裁委員会,の3つが必要的記載事項となっています(中国仲裁法16条2項)。

 今ネットで確認してみましたら,2006年に中国の最高人民法院が仲裁合意について司法判断を示しており,仲裁合意は書面でなされる必要があるが,書面には電報や電子メールを含むこと,仲裁委員会の選定に関する合意は,仲裁機構を特定できる程度に明確であることを要するが,仲裁機構の特定に支障がなければ名称に誤記があっても有効である,などといった内容で,今後中国の下級裁判所もこの判断に従って運用がなされていくものと考えられます。

 そんなわけでですね,みなさまの中で中国ビジネスをやっていこうとお思いの方は,信頼できる仲裁機構をあらかじめ選んでおいて,中国企業との契約締結交渉では紛争が生じた場合はそこに仲裁を頼むという合意を取り付けて,契約書に仲裁合意の規定を盛り込んでおかれたらよろしいのではないか,と思うわけであります。

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