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消費者契約法と特定商取引法(2)

 えー,前回に引き続いて消費者契約法と特定商取引法について,事案を見ながら考えたいと思います。

 まず,現状の分析をしましょう。本件では相談者は個人で,契約の相手方は消火器販売業者ですから,この契約は消費者契約法の適用を受けます(消費者契約法2条)。また,消火器の訪問販売ですから,特定商取引法の適用も受けます(特定商取引法9条,政令指定商品19)。もちろん,民法や商法の適用も受けることになります。それぞれ別の制度ですので,どちらが優先というわけではありません(消費者契約法11条)。

 そして,本件では目的物が消火器1台,代金が3万円の売買の合意が成立しているので売買契約の成立が認められ,相談者が代金3万円を業者に支払って消火器を買った時点で,契約は目的を到達して終了しています。

 次に依頼事項の確認ですが,「消火器を返品して,お金を取り戻したい」,つまり,①消火器の売買契約をなかったことにしたい,そして②支払済代金の返還請求をしたい,というものです。

 成立した契約がなかったことになるツールには,無効,取消,解除があります。論理的にはこの順番で考えることになりますね。ちょっと話はそれますが,たとえば,断るつもりで「結構です」と言ったら「結構ですと言ったから商品を送りました。代金払って下さい。」と言われた,というこれまたベタな事案では,そもそも契約が成立していないと考えられるので,契約不成立が一番最初になると思います。

 では,本件の消火器の事案で無効・取消・解除の事由にはどんなものが考えられるでしょうか。

 錯誤無効(民法95条)

 法律上,消火器設置の義務があると誤信し,その誤信に基づいて買った。・・・「消火器設置義務」は,いわゆる動機の錯誤ですね。目的物や値段等の取引条件自体には錯誤がありません。判例によれば動機の錯誤も表示されれば意思表示の内容となるので,表示されていて且つ要素性があれば錯誤無効となりえます。要素性については,まあ義務がないならフツー買わないと,いえなくもないかな・・・まあ,言えるでしょう,たぶん。「設置が義務だから買う」ということを言ったのかどうか,買った当時の状況を詳しくうかがって確認する必要がありそうであります。

 詐欺取消

 法律上,消火器設置の義務はないにもかかわらず,義務があるとの虚偽の事実を告げられ,それを真実であると誤信したことにより買った。

 消費者契約法による取消

 法律上,消火器設置の義務があるとの虚偽の事実を告げられ,それを真実であると誤信したことにより買った。・・・しかし,ワタクシは本件で消費者契約法が使えるのかちょっと疑問です。消費者契約法の不実告知の対象となる重要事項は,契約の目的である物や役務の質・値段等の取引条件に関するものに限定されているところ,消火器販売義務があるかどうかは消火器の質・値段等の取引条件に影響する事実ではないと考えられるからです。今度学校に遊びに行く用事があったら図書館でコンメンタールを見てこようっと。

 特定商取引法による取消

 法律上,消火器設置の義務があるとの契約締結を必要とする事情(法6条1項6号)の不実告知があり,それを真実と誤信したことにより買った。

 特定商取引法による解除(クーリングオフ)

 本件は特定商取引法の訪問販売に該当し,消火器は政令により指定された商品である。かつ,契約内容を記載した書面の交付を受けた日から起算して8日以内である。・・・消火器のクーリングオフ期間は8日です。初日算入なので要注意。本件では「10日前」となっていますが,あきらめるのはまだ早い! 契約書に特定商取引法の要求する必要的記載事項が全部書いていなければ,特定商取引法のいう「書面の交付」があったとは認められませんから,クーリングオフ期間は進みません。つまり,まだクーリングオフできるということです。そこで,相談者に契約書を見せてもらって,必要的記載事項が書いてあるかどうか,ひとつひとつチェックする必要がありますね。

 ・・・とまあ,このぐらいでしょうか。先にも述べましたが,特定商取引法や消費者契約法に優先・劣後関係はありませんから,相談者にいちばん有利なものを使って契約をなかったことにすればよいわけです。

 それでは,上述したツールの中で,どれが相談者にとっていちばん有利なのでしょうか。その判断基準は何なのでしょう。次回はそこらへんについて,ワタクシの私見を述べてみたいと思います。

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