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輸入品の欠陥によって生じた損害と国際裁判管轄

 えー,今日は昨日の国際私法勉強会で「おおーなるほど」と思ったことを忘れないうちに書いておこうと思います。お題は東京地裁平成18年4月4日の中間判決。内容を一部はしょりますが,香港の代理店を経由して台湾企業から部品を調達し,別の台湾企業でその部品を使った製品を製造してもらい,できあがった製品を日本に輸入して販売していた日本企業が,調達した部品の欠陥が原因で製品を回収することになったため,生じた損害の(1)債務不履行,または(2)不法行為,に基づく賠償を請求する訴訟を東京地裁で起こしたという事案です。詳しいことはジュリスト No.1332 (1332) に載っています。

 この訴訟では裁判管轄が日本にあるのかないのかが問題になりました。つまり日本の裁判所が扱っていい事案かどうかということで,訴えられた台湾企業は「これは台湾国内で起きた問題だから台湾の裁判所で扱うべき問題であって,日本の裁判所のでてくる幕ではない」というような主張をしたわけです。

 それでは日本の管轄ルールはどうなっているかと申しますと,ハッキリ定めた法規がないため,当事者の公平・裁判の適正迅速という条理に則って,特段の事情のない限り日本国内に民事訴訟法の裁判籍があれば日本に管轄が認められるということになっております。

 そこでまず民事訴訟法4条の普通裁判籍を検討すると,まあ要するに日本に営業所や事務所なんかがあれば認められるわけなんですが,本件の台湾企業は日本にそういう事務所は置いていませんでした。

 次に5条を検討すると,(1)債務不履行は財産権上の訴えですから義務の履行地に管轄があり,(2)不法行為は不法行為地に管轄が認められます。東京地裁は(1)本件では日本企業は香港の代理店を通して台湾企業に発注しているため,契約当事者は香港企業と台湾企業であるから日本企業が契約上の責任を追及するのは失当,といって債務不履行に基づく損害賠償請求について日本に管轄を認めませんでした。(2)の不法行為に基づく損害賠償請求については,不法行為地とは結果発生地を含むところ,本件で損害が生じたのは日本国内だから,日本に裁判管轄が認められるとしました。

 それじゃー東京地裁は不法行為についてだけ判断するんかいなーと思いきや,東京地裁は(1)も(2)も両方とも判断しますよん,という結論を出しました。エッなんで!? (1)については日本に管轄がないって今いったジャン!とワタクシは疑問に思いました。なにをどうすればそんな器用なマネができるのでありましょう。

 答えは民事訴訟法7条にありました。併合請求の場合は複数の請求のどれか一つに管轄が認められれば,手間を省くためそこで全部まとめて裁判してオッケーであるという規定です。ただしあんまり無関係な複数の請求だとかえって手間が増えますから,複数の請求の間に密接関連性がないとダメよ,ということになっているのであります。こんな条文そういえばありました。いやはやまったく灯台モトクロスであります。お恥ずかしい。

 本件ではどちらの請求も欠陥製品で生じた損害を払ってもらいたいという点では同じで,基本は(1)だがダメなら(2)で,という裏表の関係ですので密接関連性はバッチリであります。そういうわけで,東京地裁は両方まとめて面倒見ることにしたのですね。ワタクシが東京地裁の裁判官じゃなくて,ホントによかったです。ワハハ。

 行政書士は裁判沙汰にはノータッチですが,海外から取り寄せた品物に欠陥があって損害がでたのだがどうしよう,みたいな相談がきたら,海外から取り寄せたんなら無理でしょう,なーんて言う前に,国内でなんとかできることもあるかもしれない(日本に営業所を置いてるかもしれません)ということですので,行政書士にも多少は参考になるのではないでしょうか。

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